シーン26:インセプション〜父の愛〜
第2階層。 ホテルのエレベータの中。
音楽を開始してから「キック」のタイミングを計っていたアーサーは、起爆スイッチを押す。
エレベータの箱の上部で爆発が起こり、箱は猛烈な勢いで推し進められる。
第3階層。 金庫室の大きな扉の前で、状況がよく分からないロバート。
扉のセンサーに触れると、扉が開き始めた。
扉の向こうは真っ白な病室だった。
よく見ると、父、モーリス・フィッシャーが病床のベッドに寝ている。
近づくロバート。
父が必死で何かを言っている。
ロバートは顔を近づけた。
「わしは、お前に・・・・・・」父が言う。
ロバートはため息をつき、悲しげな顔をした。
「わかってます。 ・・・・・・失望した、でしょ?」
「父さんを超えることはできないよ」ロバートは言う。
「・・・・・・ちがう」父は小さく首を振る。
「失望したのは・・・、お前が・・・わしを・・・真似るからだ」
父の言葉に驚くロバート。
第2階層では、猛烈な勢いで落下中のエレベータ。
エレベータの中で眠っているメンバーは、推進力が擬似的な重力となっていて、もう宙に浮いてはいない。
第3階層では、音楽が聞こえてからの時間を計っていたイームスが起爆スイッチを握って「キック」のタイミングを探るように、眠っているコブとアリアドネを見る。
ロバートは父の手を握る。 しかし父は震える手を動かし、枕元を指差す。
ロバートがその先を見ると、そこには小さな金庫が壁に埋め込まれていた。
ロバートは、父の顔を見た。 父は力を振り絞って金庫を指差している。。
ロバートはためらいながら金庫の番号を押す。
金庫はその番号で開いた。
開けてみると、遺言状が見えていた。
ピーターの言ったことは本当だったのだ。
ピーターが言うには遺言状の内容は「親に頼らず、自分の道を自分の力で切り開いて欲しい」という事。
そして、父親が自分に失望していたのは、親の真似ばかりして、自分自身の考えや行動を見せなかったことに対してだった。
ずっと自分に冷たいと思っていた。 しかし父には、実は隠していた想いがあったのだ。
遺言を取り出すロバートは、その奥にまだ何かが入っていることに気がついた。
ロバートはこみ上げてくる涙をこらえた。
そこには、見向きもしてくれなかったと思っていた、幼い頃父にプレゼントした、風車が大切に仕舞われていた。
ロバートは、厳しかった父の、隠していた愛情を、金庫から取り出して父を見た。
モーリス・フィッシャーは既に息絶えていた。
ロバートは父親の手を取り、額を押し当てて泣いた。
そして、これはインセプションの完了を意味していた。
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