「インセプション」のルール(設定)・用語を徹底解説!:映画「インセプション[INCEPTION]」徹底解説サイト

「インセプション」のルール(設定)・用語を徹底解説!
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「インセプション」のルール(設定)・用語を徹底解説!

映画「インセプション」の世界には独自のルール・設定があり、それがこの作品の魅力でもあるのですが、ちょっと難しいと感じたり、よくわからなかったという感想の要因ともなっています。

ここでは、「インセプション」の世界のルール・設定や、劇中で使われる用語・キーワードについて徹底解説いたします。また、考察も加えた上、随所にネタバレがありますのでご注意ください。


・夢の世界(The world of the dream)

「インセプション」の世界では、数人で夢を共有することができる。

夢の世界は多層構造になっていて、夢の中で夢を見ることで、更に下の階層へと行くことができる。また、夢の中は現実とは時間の進み方が異なる。深い層に潜れば潜るほど、夢は不安定になっていくとされている。

夢から覚めるには(現実世界に戻るには)、大きく分けると3つあると考えられる。一つはキック。二つ目は、夢の中で死ぬこと。そして、三つ目はドリームマシンの各人に設定された時間が終わること。(劇中冒頭のミッション(新幹線車中でのサイトーからのエクストラクション)で、その描写が見られる)

ただし、今回のミッション(作戦)・インセプションにおいては、深い階層(第3階層)まで潜る必要があり、夢が不安定になってしまうのを防ぐため、調合師ユスフが用意した強力な鎮静剤を使うことでより深い眠りにつくことになる。そのため、通常であれば、夢の中で死ぬことで目覚めることができるのだが、今回は正常に目覚めることはできず、「虚無」と呼ばれる世界へ落ちてしまうことになっている。


・夢の共有(Dream sharing)

「インセプション」の世界では、ターゲットの夢の中に入るのではなく、数人で夢を共有し、その中にターゲットを連れ込んでエクストラクション(アイデアの抜き取り)を行う。(今回のミッションに限ってはインセプション(アイデアの植えつけ))

夢を共有するには、「ドリームマシン」を使用する。

また、夢の共有を行う際は、大元の夢を提供する夢の主とでもいうべき「ドリーマー」が必要となる。

なお、夢の空間のディテールは、設計士が設計した世界が構築される。


・夢の中での時間の進み方

夢の中での時間は、現実世界とは同じではない。

「夢の中では心の動きが早い」という理由から、時間が遅く感じる。しかも、下の階層へ行けば行くほど遅くなるという設定。

具体的には、調合師ユスフが、夢の中では「脳の動きは20倍ずつ加速する」といっている。現実世界の10時間が、夢の第一階層で1週間、第2階層で6ヶ月、第3階層で10年近くが経過する、となっている。

なお、実際に計算してみると、正確に20倍にはなっていない。おおよそということだろうか。

ちなみに、「虚無」での時間の進むスピードについては、劇中では触れられていない。しかし、仮に「虚無」が第4階層だと仮定すると、同じ計算でいけば約200年が経過することになる。


・ドリームマシン

夢の共有を行うために使用される装置。(※日本語字幕版の劇中で、直接その言葉が出てくることはない)

劇中では、あまり詳細について触れられていない。web上に「ドリームマシーン/MV-235A」の取り扱い説明書風のwebサイト(英語)があるが、公式に作成されたものなのか、個人が作成したサイトなのかは不明。

そのサイトによると、ソムナシン(Somnacin)という架空の薬物を静脈に送り込む、ポータブル点滴装置(Portable Automated Somnacin IntraVenous:通称PASIV)とされているようである。


・ドリーマー(The dreamer)

夢の共有を行う際、大元となる夢(夢の空間)を提供する者のこと。夢の主ともいえる。(※日本語字幕版の劇中で、直接その言葉が出てくることはない)

なお、夢の空間のディテールは、設計士が設計した世界が構築される。

また、夢の中で夢を見る場合は、各階層ごとにドリーマーが必要とされる。

今回のミッション・インセプションを具体的に見ると、夢の第1階層(雨のL.A.)は調合師のユスフ、第2階層(ホテル)はアーサー、第3階層(雪の要塞)は偽造師イームスがドリーマーである。

冒頭のサイトーへのエクストラクションのシーンでは、夢の第1階層(サイトーが以前暮らしていたと思われる部屋)は設計士のナッシュ、第2階層(城のような屋敷)はアーサーがドリーマー。

ドリーマーの役割は、ドリームマシンを操作して下の階層に仲間たちを送り出すこと、キックして仲間たちをその階層へと戻すこと。特に、今回のミッションでは、夢の中で死んでしまうと、通常のように上の階層には戻れず虚無に落ちてしまうため、キックを確実に行うことが極めて重要となる。

また、ドリーマーが殺されるとその階層が崩壊してしまうため、対象者の潜在意識の投影の攻撃を避けながら作戦を行わなければならない。(※劇中では、冒頭のサイトーへのエクストラクションの際に、夢の第2階層で、ドリーマーであるアーサーがコブに撃ち殺されることで崩壊し始める)


・キック(A kick) キックの定義(ルール)の詳細はこちら

夢から目覚めさせ、強制的に現実(or 一つ上の階層)に戻すために行う行為。「蹴る」という意ではない。

具体的には、夢を見ている者の身体の平衡を乱して落下感か、強い衝撃を与えるとされている。

ミッション・インセプションでは、第2階層(ホテル)ではエレベーターの爆破が、第1階層(雨のL.A.)では橋からのジャンプ(による落下感? or ガードレールへの衝突?)→失敗→着水の衝撃、がキック。

冒頭のサイトーへのエクストラクションのシーンでは、第2階層(城のような屋敷)から戻るための、第1階層(サイトーが以前暮らしていたと思われる部屋)で椅子を倒して水を張ったバスタブに落とすのがキック。

ちなみに、水中へ落とすのはキックの主目的ではないはず。推測ではあるが、シナリオ上の理由はコブの身体を落下の衝撃から守るためと考えられるが、作品として見た際は、インパクトのある映像表現の一環(バスタブへの落水する描写・下の階層の屋敷への影響を及ぼして水が押し寄せてくる描写)としての落水ではないだろうか、とも考えられる。

なお、キックの定義については、本編を見る限り、複数の考え方ができ、話題を呼んでいる。 そこで、もっと掘り下げたキックの定義についてのページを用意した。 キックの定義(ルール)の詳細はこちら。


・トーテム(Totem)

夢へ侵入する者が、自分が夢の中にいるのか、現実世界にいるのかを判断をするために使用する物。

手触り、感触、重さなどの質感はを確かめて判断する。また、それは、持ち主本人のみが知り、他人に知られてはいけない。(※悪用(=実際は夢の中なのに、現実と思い込まされたり)される可能性があるからと思われる)実際、劇中でも、アーサーとアリアドネが、トーテムを他者に触らせないシーンが描かれている。

コブはモルの形見であるコマをトーテムとしていて、夢の中であればコマは回り続けるという設定になっている。この設定が、話題・問題のラストシーンにとって、重要な要素になっていることはいうまでもない。

アリアドネは、劇中、チェスの駒(クイーン)のトーテムを自作しているシーンがある。

アーサーはイカサマサイコロ。おそらく、決まった目が出せるなどの、特別なダイスだと推測される。その他のメンバーの、それぞれのトーテムに関する描写は劇中では見られない。

また、「totem」という言葉は、辞書的には「信仰の対象になるもの」というような意味があるのだが、「組織における階層構造」という意味もあるようである。

劇中での夢の”階層構造”とかかっているのかどうかは定かではないが、面白い一致である。


・エクストラクション(Extraction)

人が最も無防備な状態になり、かつ見ている間は現実だと思ってしまう夢を見ている間に、その潜在意識に入り込みアイデアを抜き取る行為のこと。

コブたちのような、企業スパイ・産業スパイの集団が本来行うのはこのエクストラクションであって、今回行ったインセプションはレアケース。

なお、キャラクター設定としては、コブはエクストラクションを行う企業スパイとしては、世界でもトップレベルのスペシャリストという設定になっている。サイトーが、冒頭のサイトーへのエクストラクションの夢の第一階層で、「噂どおりのいい腕だ」と口にする描写や、義父のマイルズがコブにかける言葉からも、それがうかがえる。


・インセプション(Inception)

コブら企業スパイが本来行うエクストラクション(アイデアの抜き取り)とは逆に、ターゲットの潜在意識にアイデアを植えつける行為。

インセプションは非常に難しいとされており、サイトーから依頼を受けた際、アーサーが即答で「無理だ」と答えたほどである。

偽造師イームスも、一度インセプションを試みたというが失敗したという。失敗した原因は、アイデアを植えつけた(インセプションした)階層が浅過ぎたからだという自己分析を口にする。(※近作のミッションがロバートに第3階層でインセプションするので、イームスは過去に、第1階層か第2階層でインセプションしたものと推測される)

また、コブ自身も、冒頭で過去にインセプションの経験があると口にする。その過去のインセプションとは、今作のストーリー上のもう一つの大きな柱である、モルとの過去の真相である。

インセプションを成功に導くには、単純でプラスの感情を植えつけるのがいいとされ、更には、深い階層へのインセプションが求められる。

この”インセプション”が、今作品のタイトルとなっており、サイトーのライバル企業の御曹司ロバートへのインセプションがメインストーリーとなっている。


・虚無(Limbo) 虚無(limbo)に関する更に詳細な考察はこちら

日本語字幕版では「虚無」とされている。辞書的には「1.(キリスト教において)辺獄、地獄の辺土 2.拘留所、刑務所、監獄、拘禁 3.忘却」となっている。

劇中においては、夢をいくつもの階層を潜っていくと辿り着く場所、潜在意識の奥深くにある場所となっていて、そこには何もなく、何もかも忘れてしまう忘却の空間で、精神が迷子になってしまう場所と設定されている。

劇中では、「虚無」について詳細な説明がなく、その世界の設定について判断に悩む点が多々ある。しかし、物語上、非常に重要な位置づけのため、映画「インセプション」がわかりにくくなる一因となっている要因と思われる。

「虚無」は、そう簡単には行けないところとなっているが、今回の作戦では、非常に強い鎮静剤を使用しているため、通常なら夢の中で死ぬと目が覚めるところが、そうはならず「虚無」へ落ちてしまうという設定になっている。

「虚無」に落ちてしまうと、現実の身体が目を覚ましても精神は戻って来ず、廃人・植物人間状態になってしまう可能性があるとされている。。

劇中では、夢の中で失命したロバートが「虚無」に落ち、それを救出するためにコブとアリアドネが虚無へ向かう。(※第3階層から潜って「虚無」へ行ったのだと考えると、「虚無」と第4階層が同義なのかもしれないが、定かではない)

「虚無」でロバートを救い(建物から突き落とす)、アリアドネも闇へと落ちる。(※この描写から、「虚無」から戻るには、「虚無」の中で死ねばいいと受け取ることもできるが、明確な説明はない。また、ここでの描写が、「キックはその階層で」という誤解にも繋がっているようでもある)

コブは、その段階では「虚無」から戻らず、第3階層で失命して落ちてくると思われるサイトーを待つこととなる。

何も形がないといわれるはずの「虚無」に世界が構築されていたのは、夢の共有をしている一人コブが、過去にモルと「虚無」に行き、そこに世界を構築したからと推測される。劇中で、アーサーがそのようなことを口にするシーンもある。また、「虚無」の中でサイトーとコブが出会う場所も、劇中冒頭のサイトーへのエクストラクションの第2階層の城のような屋敷であることも、同様の理由からだと推測される。

コブとサイトーがどのようにして「虚無」から抜け出したかの明確な描写はないが、サイトーがピストルを手にしたシーンで場面が切り替わることから、やはり「虚無」で死亡することで戻ることができるのではないかと思われる。

サイトーが老人になってしまっていたのは、「虚無」は非常に時間の流れるスピードが早いのと、「虚無」に落ちて現実を見失い、サイトーがそこが現実だと思い込んでしまっているからと考えられる。一方、コブはそこが「虚無」だと認識してそこにいるので若い姿のままでいられる。また、過去にコブとモルが「虚無」で過ごした際も、二人ともそこが「虚無」だと認識した上でそこにいるので、若い姿のままの描写がなされている。

なお、虚無(limbo)に関する更に詳細な考察のページを設けました。あわせてご参照ください。


・設計士(The architect)

共有する夢の世界を構築・設計する者のこと。今回のインセプションの作戦においては、アリアドネが設計士。

コブもかつては優秀な設計士だったが、モルとの過去のいきさつの後、潜在意識の投影(プロジェクション)である亡き妻モルの幻影を生み出してしまうようになり、設計をしなくなった。

そのモルも設計士だった。

また、作戦の準備中に、アリアドネにペンローズの階段を見せているところから推測するに、アーサーも設計ができるのではないかと思われる。

劇中冒頭のサイトーへのエクストラクションでは、ナッシュが設計士である。

設計士の仕事・役割は、ターゲットが夢を現実と思い込むようなリアリティのある世界を構築すること、トラブルが発生したときに逃げ隠れしやすいよう迷路のような街・舞台を構築すること、ターゲットの人物が秘密を隠しやすいような金庫などを用意しておくこと、などなどが挙げられる。

ミッション・インセプションの準備中に、アリアドネが設計の詳細をコブに説明しようとするもコブが固辞するシーンがあるが、それは、コブが設計を知ることで、コブの潜在意識の投影であるモルが出てきて妨害をするおそれがあったためである。

また、コブは計画当初、アリアドネをミッション・インセプションに同行させるつもりはなかったことから、必ずしも夢の共有時に設計士が必要ではないものだと推測される。

(※アリアドネが結局同行するようになったのは、コブが仲間にも秘密にして、モルとの思い出を夢の世界に構築するようなことをしているのに気がついたアリアドネが、コブには理解者が必要と考え、それをコブに認めさせたため)


・対象者(The subject)

アイデアのエクストラクション(抜き取り)の対象となる人物のこと。ターゲット。

ミッション・インセプションではロバート・フィッシャー、劇中冒頭のミッションでは、サイトーが対象者である。


・投影(Projection)

対象者の潜在意識によって、夢の世界に作り出された人物たち。現実に存在するわけではない。

対象者が違和感を感じると(現実だと思っていたのに夢だと気がつくなど)、潜在意識が異物を感じ取りドリーマー(夢の主)を探し始める。投影である人物たちからジロジロと見られるようになり、攻撃されるに至ることもある。

巨大企業の社長の御曹司であるロバートは、夢を防衛する訓練を受けていたため、コブたちは夢の各階層で激しく攻撃を受けることになる。

劇中序盤で、コブとアリアドネが夢を共有するシーンで(夢の共有についてレクチャーするシーン)、アリアドネがリアルタイムで夢に手を加えていくことで、投影である人物たちから注目されるようになる。また、ミッション・インセプションの第2階層(ホテル)で、コブがロバートにこれは夢だと告げる(ミスター・チャールズ)シーンでも、投影された人物たちが、ドリーマーであるアーサーを気にし始めるのが見て取れる。

夢の中で随所に現れるコブの子供や、亡き妻モルも、コブの潜在意識が生んだ投影である。

ちなみに、投影(projection)という言葉の辞書的な意味としては、「物の影を平面に映し出すこと。また、その影」という意味や、「心理学で、考え方や行動に心の内面が表現されること。自分の性質を他人の性質にしてしまうこと」という意味もあることから、そのどちらの意味も含んで使用されているのではないかと考えられる。


・ペンローズの階段(Penrose stairs)

ペンローズ親子が考案した、目の錯覚を利用した不可能図形の一つ。ループ上になった階段のこと。騙し絵の一つで、二次元中でしか表現できない。エッシャーの作品が有名である。

夢の設計を行う際、ターゲットに夢の階層を意識させないように、この理論を応用するとされている。

劇中の序盤でアーサーが、実際に夢の中でアリアドネにペンローズの階段を体験させるシーンが見られる。

また、インセプションの作戦中にも、第2階層(ホテル)で、アーサーがロバートの投影であり夢を防衛するための敵をかく乱するために、ホテルの階段でもペンローズの階段を利用する。(※この際のペンローズの階段が、設計士であるアリアドネが予め設計(用意)していたものなのか、その場でアーサーが構築したものなのかは不明。状況的に後者か?)


・ミスター・チャールズ(Mr.Charles)

夢の中で、あえてターゲットに「ここは夢の中だ」と教える行為の作戦名・コードネーム。

現実だと思い込んでいるターゲットに夢だと告げることで、ターゲットの混乱を招き、次の展開へと進めていくための作戦と考えられる。

今回の作戦では、第2階層(ホテル)でロバートに実行し、コブを夢を守るためにロバートが投影した夢のガードマンだと思い込ませ、更に下の階層への誘導を行った。

なお、第1階層(雨のL.A.)のバンの車中で、コブが「ミスター・チャールズ」をすると口にしたところ、アーサーが驚きを見せたところからも、かつて失敗したのか成功率が低いかがうかがえる、繊細で難易度が高い作戦だと推測される。


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