シーン17:ロバートの監禁〜父との思い出〜
ロバートの目の前に黒い覆面を被った男達がいた。コブ達である。
「誘拐されると、保険が1000万ドル降りる。それで十分だろう?」まぶしそうに目を細め、ロバートが言う。
「親父のオフィスにある金庫があるな」男達は取り合わずに質問する。
「金庫など知らない」ロバートは言う
「隠してもムダだ!6桁の番号だ!言え!」銃を突きつける覆面のコブ。
「私は、知らない!」怯えつつもキッパリと言う。
覆面の男達がなにか話し合い、ロバートに言う。
「身内がばらした」
「身内? 誰のことだ?」ロバートが怪訝な顔をする。
男達の一人が一旦監禁場所から出て行く。
ユスフがロバートから受け取った財布の中身をチェックしている。
「現金、ID・・・、ん? これは?」
現実世界で父・モーリスの枕元に飾っていた写真が財布に入っていた。 ユスフはイームスに手渡す。
イームスは写真を見て、ロバートのところから戻ってきたコブに「使えるかな」と言って見せる。
「多分な」コブは写真を見て言う。
イームスは鏡の前で、変装の準備をしていた。
「1時間で聞きだせ」コブが言う。
「1時間? 一晩の間違いだろ?」イームスが言う。
「サイトーが撃たれてなければな」コブが言う。
イームスは一瞬のうちにフィッシャー社の重役、ピーター・ブラウニングの姿になっている。
「1時間だ」コブが言う。
イームスが化けたピーターは突然苦痛の叫び声を上げる。
その苦悶の声は縛られているロバートのところまで聞こえてくる。
「なんだ?」ロバートは誰かの苦痛の声に不安げな表情。
ロバートはハッとする。
「まさか・・・、ピーターか」
拷問を受けているように聞こえる叫び声の主が、ピーターだと気が付くロバート。
「やめさせてくれ。 彼と話させてくれ。 私が彼から聞きだす」ロバートが覆面の男に頼む。
叫び声が途切れ、覆面の男に連れられて、縛られたピーターが現れる。
「ピーター!」ロバートが呼びかける。
「ああ、ロバート」ピーターが疲れ果てたようにへたり込む。
そのままロバートの隣につながれるピーター。
「1時間だけやる。 さっさと話せよ」そういって覆面の男達が出て行く。
「捕まって、もう2日になる・・・・・・」ピーターが言った。
ロバートが気の毒そうにピーターを見る。
「やつらはモーリスの金庫の番号を教えろというだ。だがワシは知らん。君なら知っているんだろう?」
ロバートを見るピーター。
「いや、僕も知らないよ」ロバートが言う。
「何だって?モーリスは君は知っていると」驚いたようにピーターが言う。
「何も聞いていない」ロバートが言う。
「もしかしたら金庫の番号として聞いてないのかもしれない。何かないのか、親父さんとの思い出に出てくる数字は」ピーターが言う。
モーリスの言葉にロバートは悲しそうな表情をする。
「父との思い出なんて無いに等しいよ」ロバートが自嘲気味に言う。
「それじゃあ、母親の思い出は・・・」ピーター。
「母が亡くなった時の父の言葉はこうだ。『ロバート、言うべきことは何も無い』 ボクはまだ11歳だった」
「モーリス!あの性格だから・・・」ピーターは同情した顔で言う。
「ボク達を殺したら金は入らない。 殺されることはないんじゃないか?」ロバートが言う。
「俺達を河に沈める話をしていた。 聞いたんだ」ピーターが言う。
「金庫の中身は?」ロバート。
「君への、大事な贈り物だ」ピーターが言う。
「贈り物?」
「遺言だ」ピーターが言う。
「それは弁護士のところにあるはずでは?」ロバートが反論する。
「もう一通あるんだ。どちらの遺言を選ぶかは君に権利がある」ピーターの言葉はロバートにとって、かなり意外なものであった。
「なんだって?」
「社を分割し、帝国を潰す気だ」ピーターが言う。
「ボクが会社を潰す? なぜ?」ロバート。
「愛情表現だ。彼なりの。 自分の力で何かを成し遂げろと・・・」ピーターが言う。
「そんな・・・父が死ぬ際、最後の言葉を言おうと、僕を引き寄せた。 聞き取れた一言は・・・・・・『失望した』だ」ロバートは言う。
ロバートもピーターも途方にくれた。
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