シーン4:設計士アリアドネ〜妻の父とその教え子〜
パリ、某大学の構内を歩くコブ。
授業をやっていない、広い教室の教壇で一人机に向かうマイルズ教授の姿を見つけた。
「教授室は嫌いですか?」言いながら教室に入っていくコブ。
マイルズは顔を上げ、コブを認めると「物置で考え事はできんよ」と返す。
「警察は平気なのかね?」マイルズが聞く。
「米仏間は犯人の受け渡しが面倒なんですよ」コブがおどけて言う。
「君が相手なら当局は動くぞ」
そう言うマイルズに紙袋を渡し、「今度子供たちに会うときに渡してください」と頼むコブ。
「ぬいぐるみをプレゼントするより、もっと父親らしいことをしたらどうかね」嫌味を言うマイルズ。
「アナタに教わってない」切り返すコブ。
「盗みもな」更に切り返すマイルズ。
「心を操作する技術を学んだが、合法的に活かせる場所がなかった」言い訳をするコブ。
「何をしに来たんだ?」マイルズが訪問の目的を聞く。
「家に帰れる。 力を持った人物に仕事を依頼された。 俺の犯罪履歴を消すことができるほどの力を持った人物だ。 でもそのためには仲間が必要だ」とコブ。
「自分の優秀な生徒を悪の道へ進ませろというのか?」マイルズは言う。
「悪い話じゃないはずだ」コブは言う。
「金か?」マイルズは言う。
「金だけじゃない。大聖堂やこの世に存在しないものも設計できる」とコブ
「そんな夢の世界に私の生徒を連れて行くのかね」マイルズ
「夢に入る必要はない。 設計だけでいい」食い下がるコブ。
「自分でやれ」マイルズ。
「モルが邪魔をする」コブ。
マイルズはため息をつく。
「いいか、コブ。現実と向かい合え」
「あなたの孫にとっては帰れない父親を待つのが現実だ。 これが最後の仕事なんです。 この仕事さえうまくいけば家に帰れるんです。 他に方法があれば、ここには来ません」
コブは必死でお願いをする。
にらみ合う二人。
「昔の俺みたいな学生は?」コブが切り出す。
マイルズはフッと笑い「もっと優秀だ」と言う。
「アリアドネ君」
学生たちが行きかう学内の廊下でマイルズから呼び止められるアリアドネ。
振り返ると、マイルズ教授だけでなくコブも立っている。
「こちらはコブ君だ」マイルズから紹介され、握手をする二人。
「できれば君に仕事を頼みたいそうだ」マイルズが言う。
「助手ですか?」アリアドネが聞く。
「少し違う」コブは言う。
<< シーン03:帰れぬ我が家 ・ シーン05:資格と資質 >>
[PR]クリストファー・ノーラン監督 その他の作品
フォロウイング
メメント
インソムニア
バットマン ビギンズ
プレステージ
ダークナイト
スポンサード リンク