シーン10:フィッシャー社〜父と子〜
宿泊先の建物の屋上で打ち合わせをするコブ、イームスとサイトー。
サイトーはフィッシャーについての簡単な資料を2人に配った。
「次期会長のロバート・フィッシャー。 今回のインセプション相手だ」
コブはサイトーに、今回の依頼のもっと詳しい説明を求める。
「知る必要はない」要求を突っぱねるサイトー。
「今回は普通の産業スパイじゃない。 インセプションだ。 植えつけたアイデアは小さなタネでも、どんどん大きくなる。 どれだけ重要なことか、分かっているのか? 対象者の人生すべてを狂わせてしまうかもしれないんだぞ。」
譲らないコブ。
サイトーは考えた末に話し始める。内容はこうだ。
サイトーの会社は、今までフィッシャー社が行っている事業を独占させないようにしてきたが、もう防ぎきれないようになってきている。
もしも、その分野がフィッシャー社に独占されたら、世界のエネルギー提供の半分をフィッシャー社が手にすることになる。
それを阻止することは、世界の為でもある、と。
「親子関係は?」イームスが聞く。
「確執があると聞いている」サイトーが聞く。
「この男はどうだ」イームスは資料についていた一人の男の写真を見せる。
「ピーター・ブラウニング。 会長の右腕、 ロバートの名付け親」イームスは資料を読む。
「利用するなら自分たちで調べろ」というサイトー。
「身辺調査は得意分野だ」イームスが調査を引き受けた。
早速身分を偽り、フィッシャー社の中枢に入り込むイームス。
「合意が無理なら潰せ」ピーター・ブラウニングは冷酷に言う。
「しかし、フィッシャー会長は訴訟は回避しろと・・・」弁護士らしき男が言う。
その弁護士の傍らにイームスも座っていた。
「それでは会長に指示を仰げと?」ピーター・ブラウニングが弁護士を圧迫するように語る。
「いえ・・・・・・」弁護士が返答に窮していると、「じゃあ、そうしよう」とピーターはイスから立ち上がり、奥の部屋のドアを開ける。
そこには大きなベッドに寝かされた、フィッシャー社会長のモーリス・フィッシャーと、その傍らに座るロバート・フィッシャーがいた。
モーリスは病のためにやつれ果て、もはやベッドから起きれない状態であるが、神経質そうな男であった。
ピーターがモーリスに何事か話しかけるが、もはやビジネスの話ができる状態ではなく、息子のロバートに悪態をつくばかりのモーリス。
「ロバート!わしは病人だぞ。言いつけも守れんのか、このばか者め!」
癇癪を起こして枕もとに置いているものを床にはたき落としてしまう。
飾ってあった写真立てのガラスも割れてしまう。
「さっさと片付けんか!」
父に言われ、写真立てを悲しそうに拾い上げるロバート。
その写真には、若き日のモーリスと、幼いロバートが写っている。ロバートが作ったと思われる風車を持っている写真だ。
「大事な思い出なんだろう」ピーターは気の毒そうにロバートを小声で慰める。
ロバートは首を振り「枕元に置いていても、見向きもしない」と諦めの表情のロバート。
「ロバート・・・。委任状の件だが、急いだ方がいい」ピーターはおそらく会長の死後の処理に必要な話を持ち出す。
「後で話そう」この話題を嫌がるロバート。
その様子を、隣の部屋からイームスはじっと観察していた。
「やり手だな」イームスはメンバーの前で報告した。
「会社の実権はほぼ、会長の右腕のピーター・ブラウニングが握っている」イームスは続ける。
「俺は彼を監視して、身体的特徴から癖にいたるまで、完全に彼の特徴を把握した」イームスは続ける。
「第1階層で、俺はピーターに化けて、ロバートに会社を継ぐだけでいいのかという考えを植えつける」
「できるのか?」アーサーが言う
「できる。それも自分で考えたと思い込むようにな」自信たっぷりのイームス。
「君は天才だ」アーサーが言う
「大げさだな。 ホメ殺しか?」とイームス。
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